2019年12月5日木曜日
第十四回研究会のお知らせ
第14回研究会を下記の通り開催いたします。
日時: 2019年12月21日(土)14:00~
於 :早稲田大学人間総合研究センター分室(27-8号館)
(新宿区戸塚町1-101 高田牧舎2階)
議論への積極的な参加を歓迎します。
事前に以下のアドレスまでメールをいただけると幸いです。
geinoubunka〇gmail.com(〇を@に変えてください)
報告1:遠藤協(記録映像制作・ドキュメンタリー映画制作配給)
「無形民俗文化財の映像記録制作事業」という営み
無形民俗文化財の伝承や保存において、映像(動画)は有力なツールとしてみなされ、とりわけ民俗芸能や民俗技術・行事の記録映像が数多く作られてきた。こうした無形民俗文化財の記録映像制作の多くが、都道府県や市町村、大学や博物館等の調査研究機関、助成金等を得た保存会や伝承者が実施主体となって、「事業」の形態で行われる。発表者は、記録映像制作をなりわいの一つとする映像ディレクターとして、これまでに複数の「映像記録制作事業」に携わってきたが、通常そのプロセスが知られることは少ない。発表者は記録映像の資料批判および方法論を検討する材料を提供するために、実際に携わった事業の「覚書」を書き留めてきた(遠藤2015、2019)。本発表は、そうした実際の経験に基づき「映像記録制作事業」の課題や、無形民俗文化財の伝承や保存に与える影響を、映像制作者の立場によって整理しようと試みるものである。映像作品も参照しながら下記のような話題に触れる予定である。
●映像の特性と「映像記録」
●「映像記録」なのか「記録映像」なのか
●助成金と入札ー事業をめぐる制度
●「普及版」「記録版」「伝承版」ー3点セットの限界
●事業そのものが発揮する伝承への影響
●予算なき時代の記録映像とは
遠藤協、2015、「『西久保観世音の鉦はり』の映像記録作成について ―ディレクターの立場からの報告―」『入間市博物館紀要11号』
遠藤協、2019、「『落合西光寺双盤念仏』映像記録製作事業について― ディレクターの立場による覚書 ― 」『飯能市立博物館研究紀要第1号』
報告2:久保田裕道(東京文化財研究所)
「芸態研究のススメ」
民俗芸能研究は、この四半世紀、学問としての確立をすべくその方法論が検証されてきた。本田安次に始まる黎明期の民俗芸能研究の抒情的な部分が批判され、文献資料に基づく客観的分析が重視されるようになった。特に近現代史の研究が進んだことは、芸能史研究においては大きな発展となった。またフィールドワークに根差した研究では、以前は重視されていた信仰的要素が文献資料による歴史研究側に回され、代わりに社会学的な調査研究が多くを占めるようになった。いずれにしても、民俗芸能研究を社会科学としての学術的確立を望むがゆえの方向性だったといえる。
しかしながら一方で、科学的な研究には必須であるはずの、調査対象つまり民俗芸能の客観的記述の方法論はないに等しい状況であり、研究者ごとに思い思いの記述を重ねてきた。道具などの有形部分や音楽に関してはまだよいが、民俗芸能の根幹たる芸態に関しては未だ確立が見られない。本田安次の記述や舞踊譜の存在など初期段階での腐心は、映像記録の普及に伴って関心を持たれなくなったが、さりとて芸態記録の方法論を持たないままの映像記録は単なる記録素材であり、分析のための共通視座が設定され得ない。この方法論の欠如は、芸態による類型化を阻み、結果的に民俗芸能全体の類型分類を不可能にしている。もちろん民俗芸能全体の悉皆調査データが不十分なこともあるが、この問題を解決しなければ、民俗芸能の学術的資料化はなし得ないのではないか。
以上のような問題意識のもとに本発表をおこなうが、もとより提示すべき試論は持ち合わせていない。芸態を捉えるためには、民俗芸能のジャンル毎の研究者や音楽の専門家、身体論の研究者や映像関係者などによる幅広い議論が必要となる。そのための呼びかけの場になれば幸いである。
2019年10月16日水曜日
民俗芸能学会長岡大会
民俗芸能学会の大会が新潟県長岡市で開催されます。
本研究会の参加メンバーも登壇します。
詳細は民俗芸能学会のサイトをご参照ください。
民俗芸能学会長岡大会
日時:令和元年11月30日(土)~12月1日(日)
共催:新潟県立歴史博物館
後援:長岡市教育委員会、新潟県民俗学会、瞽女唄ネットワーク
会場:新潟県立歴史博物館
(〒940-2035 新潟県長岡市関原町1丁目字権現堂2247番2)
【1日目 ― 11月30日(土)】
受付開始:12:30~
13:30~ 瞽女唄・佐渡の人形芝居(文弥人形)の鑑賞
・瞽女唄「祭文松坂 葛の葉子別れ」ほか
(出演:越後瞽女唄葛の葉会)
・文弥人形「源氏烏帽子折 卒塔婆引きの場・烏帽子折尽し」
(出演:真明座、解説:鈴木 昭英・池田 哲夫)
18:00~ 懇親会
【2日目 ― 12月1日(日)】
受付開始:9:30~
研究発表:9:40~
1.神野 知恵(司会:福原 敏男)
「伊勢大神楽の回壇における笛の機能について」
2.木内 靖(司会:福原 敏男)
「円蔵神楽と禊概念」
3.大山 晋吾(司会:福原 敏男)
「宮崎県日南市下方における神楽の伝承組織と演目構成」
4.黛 友明(司会:星野 紘)
「神事と遊芸の葛藤」
5.高久 舞(司会:星野 紘)
「民俗芸能を『記録保存』する県行政の役割と意義 ― 神奈川県を事例として ―」
シンポジウム:13:00~15:30
テーマ「民俗芸能と宗教の関係を問い直す」
報告1 鈴木 昭英「来訪した瞽女さ、実は神様だ」
報告2 坂本 要「双盤・ドラマ化された念仏」
報告3 櫻井 弘人「遠山霜月祭における八幡信仰と御霊信仰」
コーディネーター 小川 直之
本田安次賞授賞式:15:40~15:50
総会:15:50~16:50
本研究会の参加メンバーも登壇します。
詳細は民俗芸能学会のサイトをご参照ください。
民俗芸能学会長岡大会
日時:令和元年11月30日(土)~12月1日(日)
共催:新潟県立歴史博物館
後援:長岡市教育委員会、新潟県民俗学会、瞽女唄ネットワーク
会場:新潟県立歴史博物館
(〒940-2035 新潟県長岡市関原町1丁目字権現堂2247番2)
【1日目 ― 11月30日(土)】
受付開始:12:30~
13:30~ 瞽女唄・佐渡の人形芝居(文弥人形)の鑑賞
・瞽女唄「祭文松坂 葛の葉子別れ」ほか
(出演:越後瞽女唄葛の葉会)
・文弥人形「源氏烏帽子折 卒塔婆引きの場・烏帽子折尽し」
(出演:真明座、解説:鈴木 昭英・池田 哲夫)
18:00~ 懇親会
【2日目 ― 12月1日(日)】
受付開始:9:30~
研究発表:9:40~
1.神野 知恵(司会:福原 敏男)
「伊勢大神楽の回壇における笛の機能について」
2.木内 靖(司会:福原 敏男)
「円蔵神楽と禊概念」
3.大山 晋吾(司会:福原 敏男)
「宮崎県日南市下方における神楽の伝承組織と演目構成」
4.黛 友明(司会:星野 紘)
「神事と遊芸の葛藤」
5.高久 舞(司会:星野 紘)
「民俗芸能を『記録保存』する県行政の役割と意義 ― 神奈川県を事例として ―」
シンポジウム:13:00~15:30
テーマ「民俗芸能と宗教の関係を問い直す」
報告1 鈴木 昭英「来訪した瞽女さ、実は神様だ」
報告2 坂本 要「双盤・ドラマ化された念仏」
報告3 櫻井 弘人「遠山霜月祭における八幡信仰と御霊信仰」
コーディネーター 小川 直之
本田安次賞授賞式:15:40~15:50
総会:15:50~16:50
2019年9月3日火曜日
民俗芸能学会第176回研究例会
民俗芸能学会の研究例会が開催されます。どなたでも参加いただけます。
民俗芸能学会第176回研究例会
日時:令和元年9月7日14時~
場所:早稲田大学早稲田キャンパス14号館4階
発表者;蘇理剛志
「祭りにおける笠鉾の様式と機能―風流囃子物をめぐって―」
司会:山路興造
参加費:200円(会員でない方も参加できます)
企画趣旨
近年、「傘鉾」に関する研究がにわかに盛り上がりを見せている。その流れを誘引する原因の一つには、ユネスコ無形文化遺産候補のグルーピングをめぐる議論が挙げられよう。
「山・鉾・屋台行事」や「風流」あるいは「練り物」の祭りのなかで、傘鉾は祭り行列の威儀や格式を示す重要な構成要素として存在している。しかし、上記グルーピングの仕分けにおいて、傘鉾はいずれのカテゴリーにも関連しながら議論上で等閑視される印象があり、傘鉾がもつトータルなイメージが分裂している感も否めない。本発表はこうした傾向に注意を払いつつ、改めて議論の場の真ん中に傘をたて再検討を試みようとするものである。
祭りにおける「傘鉾」の機能や特徴を顧みれば、古代の貴紳の威儀具であった衣笠や、祭礼行列に都ぶりを添える風流傘の登場を経て、疫神や亡魂などいつまでもこの世に留めておいてはならない霊異を傘に集め、囃しながら生活領域の外または神域内へ鎮送する思考が、傘形の鉾という様式を生み、とくに中世後期に流布した。これは我が国独自の傘の習俗だと言え、中世~近世の日本人の祭りや信仰のかたちをめぐって特色ある興味深い問題を内在している。
本発表では、祭りにおける傘鉾がもつ本来の様式や機能を風流囃子物の傘鉾の例に求め、とくに傘鉾の祭りが多く伝わる和歌山県の事例を示して、傘鉾という祭具そのものと傘鉾が出る祭りの特色について再確認したい。
民俗芸能学会第176回研究例会
日時:令和元年9月7日14時~
場所:早稲田大学早稲田キャンパス14号館4階
発表者;蘇理剛志
「祭りにおける笠鉾の様式と機能―風流囃子物をめぐって―」
司会:山路興造
参加費:200円(会員でない方も参加できます)
企画趣旨
近年、「傘鉾」に関する研究がにわかに盛り上がりを見せている。その流れを誘引する原因の一つには、ユネスコ無形文化遺産候補のグルーピングをめぐる議論が挙げられよう。
「山・鉾・屋台行事」や「風流」あるいは「練り物」の祭りのなかで、傘鉾は祭り行列の威儀や格式を示す重要な構成要素として存在している。しかし、上記グルーピングの仕分けにおいて、傘鉾はいずれのカテゴリーにも関連しながら議論上で等閑視される印象があり、傘鉾がもつトータルなイメージが分裂している感も否めない。本発表はこうした傾向に注意を払いつつ、改めて議論の場の真ん中に傘をたて再検討を試みようとするものである。
祭りにおける「傘鉾」の機能や特徴を顧みれば、古代の貴紳の威儀具であった衣笠や、祭礼行列に都ぶりを添える風流傘の登場を経て、疫神や亡魂などいつまでもこの世に留めておいてはならない霊異を傘に集め、囃しながら生活領域の外または神域内へ鎮送する思考が、傘形の鉾という様式を生み、とくに中世後期に流布した。これは我が国独自の傘の習俗だと言え、中世~近世の日本人の祭りや信仰のかたちをめぐって特色ある興味深い問題を内在している。
本発表では、祭りにおける傘鉾がもつ本来の様式や機能を風流囃子物の傘鉾の例に求め、とくに傘鉾の祭りが多く伝わる和歌山県の事例を示して、傘鉾という祭具そのものと傘鉾が出る祭りの特色について再確認したい。
2019年6月26日水曜日
第十三回研究会のお知らせ
第13回研究会を下記の通り開催いたします。
議論への積極的な参加を歓迎します。
事前に以下のアドレスまでメールをいただけると幸いです。
geinoubunka〇gmail.com(〇を@に変えてください)
日時: 2019年7月21日(日)14:00~
於 :早稲田大学人間総合研究センター分室(27-8号館)
(新宿区戸塚町1-101 高田牧舎2階)
報告1:岩瀬裕子(首都大学東京大学院博士後期課程、国立民族学博物館館外研究員)「スペイン・カタルーニャ州の人間の塔におけるテクノロジーの受容をめぐって」
本発表は、スペイン・カタルーニャ州の祭りで220年以上にわたって行われている人間の塔における計測を主題にして、どのようなデジタル・テクノロジーが用いられ、それに対して人びとがいかに対応しているのかを民族誌的調査を通して明らかにするものである。人間の塔は、無数の肉体を密着させて塔の土台となる最下部を形成し、人が人の肩の上に上り下りすることで最下部の中心に人間による塔を造る。発表者が、2011年よりメンバー宅に断続的に住み込みながら塔造りをともにしている最古参のグループ(コリャ・ベリャ・ダルス・チケッツ・ダ・バイス、写真)では、塔造りに必要な参加者を把握するためにデジタル・テクノロジーを利用する動きはあるが、人間を正確に測り塔の構造に反映させるための利用はしていない。人びとが用いるのは、経験的に獲得、定着させてきた主として身体感覚に依拠したテクノロジーである。こうしてデジタル・テクノロジーの受け入れに伴う領域に差異がみられる背景には、身体ひとつで塔を造る人びとの「人間とは正確には測れないもの」という直観的な感覚と、「測ること」で失われてしまうことを危惧する二者関係があることを考察する。
なお、本発表は、2016年10月から行われている国立民族学博物館共同研究会(若手):「テクノロジー利用を伴う身体技法に関する学際的研究」における成果の一部である。
報告2:倉石美都(韓国 京幾大学 日語日文学科)「芸能の観光資源化とその後 ―河回別神クッと江陵仮面劇を中心に―」
韓国北東に位置する江陵市にはユネスコ無形文化遺産に登録された端午祭と、中部にはユネスコ世界遺産に登録された河回村がある。このどちらにも共通しているのが、仮面劇を伝統芸能としてもっている点である。河回村は別神クッタルノリ、江陵は無言で行われる江陵仮面劇である。どちらもユネスコに登録される前から行われているものであるが、無形文化遺産・世界遺産として河回村、端午祭が登録されると、よりクローズアップされるようになった。観光資源としての大きな役割を担ったわけである。その後、河回村も江陵端午祭もユネスコに登録されたことが人々の意識に定着すると、この芸能は観光資源の中心を担っていたものが、観光資源の一部としての役割を変える。
芸能が観光資源としての役割を担い、その役割を果たし、時間がたつにつれその役割を変えていく過程から、韓国における伝統芸能が、現在ではどのように認識され、どのような役割を担っているのかを考察していく。
2019年1月17日木曜日
第十二回研究会のお知らせ
第12回研究会を下記の通り開催いたします。
日時: 2019年3月9日(土)14:00~
於 :早稲田大学戸山キャンパス39号館4階 第4会議室
(新宿区 戸山1−24−1)
報告1:舘野太朗
「笹原亮二「ある民俗芸能家の肖像―永田衡吉の仕事を巡って―」を読む」
笹原亮二「ある民俗芸能家の肖像―永田衡吉の仕事を巡って―」は、民俗芸能研究の会/第一民俗芸能学会(以後、「第一」と表記する)で行われた報告をもとに、『藤沢市史研究』25(1992年)に発表された論文である。のちに笹原亮二『三匹獅子舞の研究』(2003年、思文閣出版)にも収録されている。永田衡吉(1893~1990)は、劇作家として活動するかたわら、小寺融吉とともに「民俗藝術の会」の幹事を務めるなど、草創期から民俗藝能の研究と実践に関わってきた。太平洋戦争後の民俗藝能研究をリードした本田安次(1906~2001)よりもひとまわり年長であり、生涯、劇作家を名乗り続けた永田は、「正しい民俗芸能研究」の確立を目指した「第一」からすると、格好の標的であったのかもしれない。本報告では、民俗藝能の実践に着目して、笹原による永田批判の再検討を行いたい。
報告2:小林敦子(明治大学アジア太平洋パフォーミングアーツ研究所)
「観光化されなかった「阿波おどり」-「津田の盆踊り」の位置づけの変遷―」
「阿波おどり」は、徳島市中(城下町)の盆踊りに昭和初期からの観光政策によりつけられた呼称である。元来は盆の時期になると老若男女が様々な集団を組み、にぎやかなお囃子に合わせ踊りながら通りを練り歩く形式であった。徳島県内の吉野川に沿った地域にも、徳島市中の盆踊りと同様の盆踊りが行われていた。「阿波おどり」は観光政策により観客に見せるショウとなり、即興的な自由な踊りから、「女踊り」および「男踊り」という様式が確立し、踊りの動作を揃え、様々なフォーメーションを組む群舞となった。吉野川地域の盆踊りも、また戦後に全国約60カ所で取り入れられた「阿波おどり」祭りでも、市中の「阿波おどり」が手本とされている。
この中で徳島市東部沿岸の津田地区の「盆(ぼに)踊り」(注:「ぼに」は方言)は特異的で あり、市中の盆踊りの観光化に追随することなく、戦後も機知に富んだ唄と自由な踊りが伝承されていた。しかし津田地区の住民も次第に市中の華やかな「阿波おどり」に参加するようになり、昭和40年代には衰退した。その後民俗芸能保存政策の潮流により昭和61年に保存会が結成され、津田地区を中心に盆の時期だけではなく各種イベントで公演を行っている。保存会の結成時には津田地区の風習を基に海難事故で亡くなった人の霊を呼ぶ儀式が構成され、踊りの前にはこの儀式が行われており、「津田の盆踊り」は精霊踊りと位置付けられ、ショウ化した「阿波おどり」で失われた信仰を保持していると表象されている。本発表では「阿波おどり」の変容に伴う「津田の盆踊り」の位置づけの変遷をたどり、民俗芸能の機能について考える。
議論への積極的な参加を歓迎します。
事前に以下のアドレスまでメールをいただけると幸いです。
geinoubunka〇gmail.com(〇を@に変えてください)
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