第26回研究会を下記のとおり開催します。
会場:対面会場およびオンライン会場(ZOOM)
対面会場:新宿区西新宿 7丁目14-5 富士ビル 302
発表1:李常清(中国・斉魯工業大学・外国語学院・日本語学科 主任 副教授)
「近代における中日民俗芸術分野の学術交流史―資料、方法論、視座の交流を中心に―」
近代において、中日両国は民俗芸術分野で常にアカデミック的な交流を行い、研究資料、方法、視座で、相互に影響を与え合ってきた。19世紀末から20世紀初頭にかけて、西洋の実証主義に影響され日本の中国学研究者や日本で留学していた中国の研究者は、相手国の民俗芸術事象を他者の視点から客観的に観察・体験・記録するようになった。その過程で、王国維と京都支那学派は戯曲のような新たな資料の発掘や研究に努め、通俗文芸研究において相互に影響を及ぼしあった。
また、西洋学問による文化的圧力の下で、両国の民俗学及びその隣接分野の研究者は、自国の文化を再評価し、各自の民族性を代表する民俗芸術を本土から発掘し始めた。日本では1927年に「民俗芸術」という概念が提唱され、芸能などが研究対象として注目を集めた。一方、中国では、1940年代に、岑家梧が日本の「民俗芸術」を導入し、「芸術民俗学」という学術的言説の構築を試み、近代民族国家の形成にも寄与するよう、学問的基盤を築こうとしている。その影響を受け、1990年代に鐘敬文は学問制度の観点から「芸術民俗学」および「芸術民俗文化学」という学問領域を提唱した。
さらに、1950年代以降、中国学と民俗学の研究は、共通の民間視点に基づき、方法論の交差と融合が進展してきた。1970年代には、田仲一成が、従来の中国学界における民俗芸術テクストの研究にとどまらず、民俗学をはじめとする他の学問分野の理論とフィールドワークの方法を取り入れ、社会的文脈に即した民俗芸術テクストの解釈を行うようになった。この新たなアプローチは、中国の民俗芸術研究に深い影響を与え、祭祀演劇を対象とした学術的交流を促進した。さらに、両国の研究者は国民国家の祭祀儀礼における民俗芸能の研究を超えて、東アジア全体を視野に入れた比較研究にも取り組むようになった。このような学術的交流は、中日両国のアカデミック的視野を広げ、民俗芸術研究における方法論と理論の革新を推進したと言えよう。
発表2:伊藤好英(慶應義塾女子高等学校非常勤講師)
「韓国のクッ(神楽あるいは神遊び)の遂行者(performer)たち」
江陵端午祭などを代表とする韓国の地域の祭りでは、最初に祭官(儒者)の導きのもとに村人の代表が神に供物を献じて祈りをささげる「祭祀(チェサ)」と呼ばれる儀礼があり、その後、巫覡が中心になって行う歌舞を伴う神遊びがある。この後者を韓国語で「クッ」と呼んでいる。
祭祀とクッとの違いは、「チェサ」が楽器・歌舞を伴わない厳かな祈りであるのに対し、「クッ」が楽器と歌舞による神との交流である点である。本発表では、後者の「クッ」を遂行する人たちの代表として、忠清道に残る「法師(ポプサ)」と「菩薩(ポサル)」、済州島の「シムバン」、東海岸の「ファレンイ」と「ムーダン」をとりあげる。
韓国の「クッ」の考察は、これまでシャーマニズム研究の視座から主に「ムーダン」の神がかり的要素に焦点をあててなされてきた。確かに「神がかり」は「クッ」の重要な要素には違いないが、「クッ」の持つ意義は、その遂行者たちが現場においてそれぞれどのような役割を担っているかを把握した上で、総合的に考察される必要がある。
そのための試みとして、本発表では最初に、忠清道の「法師」が行うクッと、これに「菩薩」が加わる比較的新しい形のクッとを紹介する。そしてこの忠清道のクッを基底に据えて、済州島の「シムバン」や、東海岸の「ファレンイ」「ムーダン」というそれぞれのクッの遂行者の役割・性格を比較検討する。
今回扱う三種のクッは、地域や歴史的な経緯を異にしていることから、外見的にも大きな隔たりがあり、その解釈もこれまで別々になされてきた。しかしこれらはすべて「クッ」という共通の用語で呼ばれており、「クッ」とは何かを考えるには、むしろこの相違するものの中に共通点を探っていくという方法が有効性を持つはずである。今回、その試論を展開してみたい。
※対面会場の定員を超えた場合は、 オンライン会場でのご参加をお願いする旨をご連絡いたします。
※オンライン会場はZOOMを使用します。 申し込みいただいたすべての方に、当日、 ミーティング情報をメールでお知らせいたします。
※タイトルは変更される可能性があります。
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