2025年11月28日金曜日

第26回研究会のおしらせ




 

第26回研究会を下記のとおり開催します。多くのご参加をお待ちしております。

日時:2026年1月31日(土)14:00~ 
会場:対面会場およびオンライン会場(ZOOM)
対面会場:新宿区西新宿 7丁目14-5 富士ビル 302

発表1:李常清(中国・斉魯工業大学・外国語学院・日本語学科 主任 副教授)
「近代における中日民俗芸術分野の学術交流史―資料、方法論、視座の交流を中心に―」
近代において、中日両国は民俗芸術分野で常にアカデミック的な交流を行い、研究資料、方法、視座で、相互に影響を与え合ってきた。19世紀末から20世紀初頭にかけて、西洋の実証主義に影響され日本の中国学研究者や日本で留学していた中国の研究者は、相手国の民俗芸術事象を他者の視点から客観的に観察・体験・記録するようになった。その過程で、王国維と京都支那学派は戯曲のような新たな資料の発掘や研究に努め、通俗文芸研究において相互に影響を及ぼしあった。
 また、西洋学問による文化的圧力の下で、両国の民俗学及びその隣接分野の研究者は、自国の文化を再評価し、各自の民族性を代表する民俗芸術を本土から発掘し始めた。日本では1927年に「民俗芸術」という概念が提唱され、芸能などが研究対象として注目を集めた。一方、中国では、1940年代に、岑家梧が日本の「民俗芸術」を導入し、「芸術民俗学」という学術的言説の構築を試み、近代民族国家の形成にも寄与するよう、学問的基盤を築こうとしている。その影響を受け、1990年代に鐘敬文は学問制度の観点から「芸術民俗学」および「芸術民俗文化学」という学問領域を提唱した。 
 さらに、1950年代以降、中国学と民俗学の研究は、共通の民間視点に基づき、方法論の交差と融合が進展してきた。1970年代には、田仲一成が、従来の中国学界における民俗芸術テクストの研究にとどまらず、民俗学をはじめとする他の学問分野の理論とフィールドワークの方法を取り入れ、社会的文脈に即した民俗芸術テクストの解釈を行うようになった。この新たなアプローチは、中国の民俗芸術研究に深い影響を与え、祭祀演劇を対象とした学術的交流を促進した。さらに、両国の研究者は国民国家の祭祀儀礼における民俗芸能の研究を超えて、東アジア全体を視野に入れた比較研究にも取り組むようになった。このような学術的交流は、中日両国のアカデミック的視野を広げ、民俗芸術研究における方法論と理論の革新を推進したと言えよう。

発表2:伊藤好英(慶應義塾女子高等学校非常勤講師)
「韓国のクッ(神楽あるいは神遊び)の遂行者(performer)たち」
江陵端午祭などを代表とする韓国の地域の祭りでは、最初に祭官(儒者)の導きのもとに村人の代表が神に供物を献じて祈りをささげる「祭祀(チェサ)」と呼ばれる儀礼があり、その後、巫覡が中心になって行う歌舞を伴う神遊びがある。この後者を韓国語で「クッ」と呼んでいる。
 祭祀とクッとの違いは、「チェサ」が楽器・歌舞を伴わない厳かな祈りであるのに対し、「クッ」が楽器と歌舞による神との交流である点である。本発表では、後者の「クッ」を遂行する人たちの代表として、忠清道に残る「法師(ポプサ)」と「菩薩(ポサル)」、済州島の「シムバン」、東海岸の「ファレンイ」と「ムーダン」をとりあげる。
 韓国の「クッ」の考察は、これまでシャーマニズム研究の視座から主に「ムーダン」の神がかり的要素に焦点をあててなされてきた。確かに「神がかり」は「クッ」の重要な要素には違いないが、「クッ」の持つ意義は、その遂行者たちが現場においてそれぞれどのような役割を担っているかを把握した上で、総合的に考察される必要がある。
 そのための試みとして、本発表では最初に、忠清道の「法師」が行うクッと、これに「菩薩」が加わる比較的新しい形のクッとを紹介する。そしてこの忠清道のクッを基底に据えて、済州島の「シムバン」や、東海岸の「ファレンイ」「ムーダン」というそれぞれのクッの遂行者の役割・性格を比較検討する。
 今回扱う三種のクッは、地域や歴史的な経緯を異にしていることから、外見的にも大きな隔たりがあり、その解釈もこれまで別々になされてきた。しかしこれらはすべて「クッ」という共通の用語で呼ばれており、「クッ」とは何かを考えるには、むしろこの相違するものの中に共通点を探っていくという方法が有効性を持つはずである。今回、その試論を展開してみたい。

※参加される方はお申込みフォーム(https://forms.office.com/r/hdr7mg0HqSよりお申し込みください(2026年1月28日締め切り)。
※対面会場の定員を超えた場合は、オンライン会場でのご参加をお願いする旨をご連絡いたします。
※オンライン会場はZOOMを使用します。申し込みいただいたすべての方に、当日、ミーティング情報をメールでお知らせいたします。
※タイトルは変更される可能性があります。

2025年6月4日水曜日

十津川村の盆踊りを踊ってみよう

おすすめ民俗芸能イベントのお知らせです。

奈良県天理市で「十津川村の盆踊り」のワークショップが開催されます。 

十津川村の盆踊りを踊ってみよう
~民俗芸能体験ワークショップ~



内容

奈良県十津川村では、毎年盆の時期に各地区で盆踊りが行われます。そのため、各地区で特徴ある歌と踊りが継承されてきました。今回、十津川村西川地区から大踊保存会のメンバーを講師としてお招きし、盆踊りの講習を行います。伝統ある十津川村の盆踊りを体験してみませんか。(奈良県十津川村の大踊は国指定無形民俗文化財に指定されています。また、ユネスコ無形文化遺産「風流踊」の1つとなっています)


日時

2025年6月29日(土)13:00~15:00

場所

天理駅前広場コフフン 南団体待合所

入場無料

要申込(定員あり・先着順)

※動きやすい服装でご参加ください

申し込みフォーム

https://forms.office.com/r/kDS24Vm8HN

問い合わせ・担当

松岡薫(人文学部歴史文化学科 matsuoka★sta.tenri-u.ac.jp)

★をアットマークに変更ください

2025年1月29日水曜日

芸能文化研究会の紹介

芸能文化研究会とは

芸能文化研究会は2015年に首都圏で活動する若手研究者によって発足しました。発表者が自身の調査や研究に関連した話題を提供し、議論を深めるとともに、参加者それぞれが課題を発見して持ち帰ることを目的としています。これまでの研究会では、祭りや芸能をテーマとして取り上げてきました、とくにその周辺の分野に関心を持つ方の参加を歓迎いたします。


研究会の形式

研究会は、年間四回程度、不定期に開催しております。東京都内の会場の他、ウェブ会議システムを用いて遠方から参加することも可能です。発表者による話題提供に一時間、それを承けた参加者による議論に一時間を目安としています。学会発表よりも長い時間を使うことで、紹介する事例等を多くすることができます。今後は、通常の研究発表の他、合評会やインタビューなどの企画も検討していきたいです。


問い合わせ・連絡は下記メールアドレスからおねがいします。

geinoubunka@gmail.com

2025年1月18日土曜日

第25回研究会のおしらせ






第25回研究会を下記のとおり、開催いたします。

多くのみなさまの参加をお待ちしております。


日時:2025年2月16日(日)14:00~

会場1:渋谷スペース会議室303(東京都渋谷区桜丘町15-17-3階)定員16名 地図

会場2:オンライン(ZOOM)

※参加される方はお申込みフォーム(https://forms.office.com/r/hR7y9kKSzh)よりお申し込みください(2025年2月14日締め切り)。

※会場1は定員を満たし次第お申込みを締め切ります。

※オンラインではZOOMを使用します。当日に申し込みいただいたすべての方に、ミーティング情報をメールでお知らせいたします。  


発表1

鎌田紗弓(東京文化財研究所研究員)

パフォーマンスの「間」:伝統音楽合奏を実証的に分析する

芸能は、役割の異なる演者が“合わせる”文脈の上に成り立っているが、それは決して特定のポイントに“機械的に揃える”ことを意味しない。むしろ「間」などの言語表現においては、“あえて微妙にずらす”時間的表現の工夫が重視されてきた。これは、従来行われてきた音楽構造や個々の技法に関する研究では扱いにくかった特徴であり、それぞれの役割が全体として協調しようとするときに生み出されるものである。本発表では、日本の伝統音楽合奏における「間」の表現を探究し、演者間協調の側面から演奏実践の営みがどのように捉えられるかを論じる。特に、歌舞伎音楽の長唄囃子合奏や雅楽の管絃合奏を事例として、実演データのタイミングや動きの同期分析、インタビュー分析などを通して、「間」を成り立たせる協調の実態を多角的に考察する。


発表2

吉川侑輝(跡見学園女子大学講師)

音楽のエスノメソドロジーは何をどのように明らかにしているか

音楽のようなノンバーバルなモダリティをそなえた現象の分析をどう進めるべきであるかは、古典的にして悩ましい問題を構成している。むろん研究の目的にそくして適切かつ可能な手法と対象を選択することが重要であることは言うまでもない。エスノメソドロジー(EM)が試みるのは個別具体的な場面を当の場面が編成される方法に即して解明することであり、その方針は典型的には映像・音声記録を利用した相互行為分析として進められる。興味深いのはこうした探求が、音楽の分析を進める社会学、文化人類学、民俗学、そして心理学等々の立場から、対象場面の局所性や手法の選択性といった観点から「奇妙な」ものと映るようだということ、そして「他者を真剣に受け取る」ことを標榜する人類学的立場や、社会成員の「認識」や「意味づけ」の特定を進める「構築主義」の立場と、EM的な経験的研究とが並置されたとき、こうした衝突が一層際立つということである。本報告が目指すのは、見かけ上類似した目的を標榜する研究方針が経験的研究の水準において相互に異質な見えを備えているという(奇妙な)状況をひとつの足掛かりとしつつ、音楽のEMが何をどのように明らかにしているかを、遠隔アンサンブルの映像等の実際のデータ分析を通じて、実演的に提示することである。