第16回研究会を下記の通り開催いたします。
新型コロナウイルス感染拡大を鑑みオンライン形式で開催します。
多くのご参加をお待ちしております。
日時: 2021年3月20日(土)14:00~ (オンライン形式)
報告1: 荒木真歩 ( 神戸大学大学院 )
薩摩硫黄島の民俗芸能の現在ー三島村の民俗・人類学的研究史をふまえてー
硫黄島とは、鹿児島県鹿児島郡三島村に属する離島であり、
一方で硫黄島は俊寛伝説があることから歌舞伎役者の故・
本発表では対外的に複数の点でのみ知られてきた硫黄島を中心にまずは三島村の歴史的背景を押さえ、民俗学や人類学の分野で三島村がどのように調査されてきたのかを整理する。その上で芸能を通して硫黄島の現在を紹介する。
三島村の歴史はあまり知られていないが、三島村という村が誕生したのは1946年で、今年は村立75年目を迎える。三島村はそれまで十島村(としまむら)と共に、十島村(じっとうそん)の名で同じ行政下にあった。終戦と同時に北緯30度以南の下七島(現十島村)が米軍の行政下になったことをきっかけに三島村として分村した。
調査は1934年5月におこわなれた、渋沢敬三を中心とするアチックミューゼアム調査「薩南十島調査団」の影響が大きい。この調査に参加していた早川孝太郎の三島村(特に黒島)の調査がなければその後の民俗学的調査の発展はなかったと言っても過言ではない。1980年代になると社会学・人類学的調査が増え、年齢階梯制、親族関係、そして伝統的諸慣行の調査が進んだ。
芸能や伝統行事に関しては、八朔太鼓踊りとメンドン、ハシタマツ(柱松)と盆踊り、九月踊りを対象に民俗学者らによって文化財調査として内容の報告がなされたり、歌詞の検討、鹿児島県下の芸能として分布研究がなされてきた。しかしこれまでの社会学・人類学的な研究とは関連付けて言及されてこなかった。ゆえに発表の最後には現在の芸能の実践をとおして島の社会的状況を描き出す。
三島村の歴史はあまり知られていないが、
調査は1934年5月におこわなれた、
芸能や伝統行事に関しては、八朔太鼓踊りとメンドン、
報告2:髙久舞(國學院大學兼任講師)
八王子市小泉家を中心とした芸能の系譜とネットワーク
民俗学における「伝承者」とは「ある社会の人々として集団的にとらえられることが、伝承者を論じるときの前提」として考えられ、これは民俗芸能の伝承者においても同様であり、個ではなく集団であること、また専業者ではなく非専業者がその対象であった。しかし実際に芸能が伝承される場では、集団を形成している個々人は一人ずつ個性のある人物であり、特にその芸能を次世代、他空間へ伝承する際には少なからずある特定の個人が関わっている。
1990年代以降、民俗芸能研究は「現場主義」「実践主義」が研究の主体となっていく。研究の潮流が変わる文脈の中で改めて注目されたのが、民俗芸能が伝承される上で存在する「個」であった。「異常人物」や「独創的かつ個性的な人物」に対する言及(橋本2006、2015)や、「民俗社会と演技者個人の〈知〉や個性」(大石2007)や人々の関係性と日常に注目する(松尾2011)など、各研究者が民俗芸能の伝承における「個」について関心を寄せているが、これらはいずれも単発的であり、民俗芸能のパーソナル研究としてまとまったものはない。
筆者の考える民俗芸能のパーソナル研究とは、伝承者である個々が様々な立場から関係性を見出し、その関係性の中で芸能を伝承していくという考えを基点としている。その中には「異常人物」や「独創的かつ個性的な人物」も含まれているが、この「異常人物」を受容するか否かも伝承における一つのあり方として考えるべきだろう。筆者はこれまで拙著(高久2017)、拙稿(高久2018)のなかで芸能伝承における個の存在について言及しているが、これに対して俵木は「個性的なものと集合的・共同的なものに対立させるのではなく、両者をともに視野に収め、その絡み合いを解き明かす方向性」(俵木2019)と指摘する。
本発表では俵木の指摘する個と集団の絡み合いを解き明かす方向性を見出すための端緒として、八王子の神楽師である小泉家の人と芸の痕跡を追いながら、彼らが与えた影響と役割や影響を与えられた側との関係性について明らかにすることを目的とする。
参考文献
橋本裕之2006『民俗芸能研究という神話』森話社
橋本裕之2015『芸能的思考』森話社
大石泰夫2007『芸能の〈伝承現場〉論』ひつじ書房
松尾恒一2011「柳田国男と芸能研究、柳田国男の芸能研究」小池淳一編『国立歴史民俗博物館研究報告 第165集〔共同研究〕日本における民俗研究の形成と発展に関する基礎研究』国立歴史民俗博物館
高久舞2017『芸能伝承論-伝統芸能・民俗芸能の演者と系譜』岩田書院
高久舞2018「伝承キーパーソンと祭囃子-東京都大田区、神奈川県川崎市を中心に-」『國學院雑誌』第118巻第4号
1990年代以降、民俗芸能研究は「現場主義」「実践主義」
筆者の考える民俗芸能のパーソナル研究とは、
本発表では俵木の指摘する個と集団の絡み合いを解き明かす方向性
参考文献
橋本裕之2006『民俗芸能研究という神話』森話社
橋本裕之2015『芸能的思考』森話社
大石泰夫2007『芸能の〈伝承現場〉論』ひつじ書房
松尾恒一2011「柳田国男と芸能研究、柳田国男の芸能研究」
高久舞2017『芸能伝承論-伝統芸能・民俗芸能の演者と系譜』
高久舞2018「伝承キーパーソンと祭囃子-東京都大田区、
俵木悟2019「民俗芸能を開く/拓く」『日本民俗学』300号 日本民俗学会
※参加される方はお申込みフォームよりお申し込みください(3月19日締め切り)。
※Zoomを使用します。