2024年7月8日月曜日

第23回研究会のお知らせ

 


第23回研究会を下記のとおり開催します。多くのご参加をお待ちしております。


日時:2024年7月28日(日)14:00~ (ハイフレックス開催)

会場:早稲田大学早稲田キャンパス(3号館604演習室)およびオンライン会場(ZOOM)


発表1
杉山兵介 (国際仏教学大学院大学博士課程)
供養と菩提
―念仏剣舞の由来譚について―

本発表では念仏剣舞における由来譚の考察を通じ、大念仏系の剣舞と阿修羅踊系の剣舞では、<供養>と<菩提>という異なった機能がそれぞれで重視されている点を指摘し、念仏剣舞の機能的かつ思想的な側面の一端を論じてみたい。

<念仏剣舞>は東北地方に分布する念仏踊で、とりわけ岩手県においては鹿踊と双璧をなす民俗芸能として認知されている。しかしながら、念仏剣舞の発生と展開をめぐっては史料の少なさから不透明なところが多く、秘伝書や口伝で伝えられてきた由来譚の殆どは異聞奇譚のため、念仏剣舞の発生と展開を歴史的に実証することは極めて困難な状況にある。それだけに、かつて森口多里や小形信夫などが念仏剣舞の歴史考証を試みたが、いずれも推測の域を出るものではない。

他方で、念仏剣舞の由来を伝える物語が異聞奇譚であり、現実的でないという理由から考察が等閑にされてきた感もまた否めない。だが、念仏剣舞における機能的かつ思想的な側面を考察する時、念仏剣舞の由来譚は有用な観点を与えてくれる。

本発表では、まず念仏剣舞の由来譚を網羅的に類型化し、主要な系統を紹介する。つぎに、もっぱら大念仏系の団体が有する梅若伝説に因縁づけられた由来譚をとりあげ、その歌謡と連関して大念仏系の剣舞が<供養>の機能性を顕著に帯びている点を指摘する。これに対し、阿修羅踊系の団体の由来譚では、念仏剣舞の作法を仏教的な意味での智慧に位置づけ、悟りとして得たそれを功徳として振りまこうとする<菩提>とも言うべき志向がある点を指摘する。

一連の試みは、念仏剣舞における機能的かつ思想的な側面の一端を明らかにするだけでなく、「大念仏」と「剣舞」とを区別しようとする踊り手の意識や、由来譚の発達過程を考える糸口となる可能性もあり、有用性が期待できる。

念仏剣舞の史料は翻刻紹介が多くなされてきたが、学問的な研究事例に乏しい。鄙見を通じて先生方からのご批判を乞いたい

発表2
澤田聖也(東京藝術大学未来創造継承センター大学史史料室教育研究助手)
ハワイの琉球芸能文化と沖縄系人の関係性
―コミュニティからネットワークへの広がりを通して―

本発表は、ハワイにおける琉球芸能の社会的・文化的位置付けをハワイの沖縄系人の文化実践を通して検討することである。ハワイの沖縄移民史は、1900年に始まり、1906年の「仲真音楽会」を発端に、次々に琉球芸能の組織が誕生した。移民初期の頃から、ハワイの沖縄系コミュニティでは、琉球芸能が連綿と受け継がれ、現在においても様々な場面で披露されている。

ハワイの琉球芸能研究には、城田論文(2006,2007,2011)や遠藤論文(2014,2020)、Ueunten 論文(2007)、Teruya論文(2014)を筆頭に優れた研究成果がある。これらの研究の多くは、沖縄系の実践者と芸能の繋がりを中心に論じ、沖縄ディアスポラにおける琉球芸能の重要性が指摘される。実際、ハワイの沖縄系コミュニティでは、琉球芸能が沖縄や祖先と繋がる重要な要素として認識されている。

一方、こうした価値観と異なり、琉球芸能が沖縄系人に敬遠される時代もあった。琉球芸能と沖縄系人の関係性は、時代や世代によって異なり、そこには、沖縄系人のアイデンティティ問題が大きく関係している。

その背景には、「日本―沖縄―アメリカ―ハワイ」の歴史的・政治的関係性がある。沖縄ディアスポラの研究は、ホスト社会のハワイとホームの沖縄の関係性を軸に展開されてきたが、本発表は、日本と沖縄という宗主国/植民地の関係をアメリカ/ハワイの関係と交錯させて議論し、近代以降のハワイの沖縄系人のアイデンティティの複雑性や重層性を検討することで、琉球芸能がどのような位置付けにあったのかを把握する。

なお、本発表は、2024年度からの研究課題「トランスナショナルな音楽実践と四重意識の関係性―ハワイの沖縄系人を事例に―」(2024年度笹川科学研究助成)の経過報告の一部である。


※参加される方はお申込みフォーム(https://forms.office.com/r/zHzHbQqqKF)よりお申し込みください(2024年7月26日締め切り)。

※オンラインではZOOMを使用します。申し込みいただいたすべての方に、当日、ミーティング情報をメールでお知らせいたします。

※タイトルは変更される可能性があります。